街角で見かけた、青い看板に「COMMUNITY STORE」の文字。
地域の小さな店舗をつないできたこのチェーンのルーツは、実はコンビニではなく「酒屋」にあります。
1978年、国分グループが「酒販店を組織化したボランタリーチェーン本部」として設立した国分グローサーズチェーン。そこから展開されたコミュニティ・ストアですが、40年以上続いたその歴史はすでに幕を閉じ、現在その姿を見ることはありません。
運営会社は2021年に全事業から撤退し、会社も清算されています。
地域に密着していた事業は、なぜ消滅してしまったのでしょうか。
公式な説明として確認できるのは、
新型コロナウイルスによる経営環境の急速な悪化と、業績回復の困難さです。
一体何があったのか。結論から先に整理すると、次の通りです。
【結論】
- 2021年11月末までに営業活動を終了
- 国分グローサーズチェーンが全事業から撤退し、その後会社を清算
- 新型コロナウイルスの感染拡大などによる経営環境の急速な悪化と、今後の業績回復が困難との判断による
- 破産による突然の営業停止ではなく、他社へのブランド一括売却でもない
- 終了後は閉店、他チェーンへの転換、商品供給元の変更、独立営業など店舗ごとに分かれた
年表で見るコミュニティ・ストアの流れ
まず、全体の流れを時系列で見ていきましょう。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 1978年 | 国分グループの公式沿革に、酒販店を組織化したボランタリーチェーン本部として国分グローサーズチェーンの記載 |
| 1994年7月 | 現在の法人形態となる国分グローサーズチェーン株式会社を設立・分社化 |
| 2015年12月末 | KGC資料で加盟店数86店、年商105億円 |
| 2018年12月末 | 経済産業省資料でコミュニティ・ストア60店舗 |
| 2020年 | セルフレジ、キャッシュレス、無人・省人化店舗「SmaPit」などの施策を推進 |
| 2021年5月14日 | 全事業からの撤退を発表 |
| 2021年11月末 | すべての営業活動を終了 |
| 2022年7月15日 | 国分グローサーズチェーン株式会社の登記記録が「清算の結了等」により閉鎖 |
1978年に始まった国分系のコンビニ事業
コミュニティ・ストアを運営していた国分グローサーズチェーンは、
食品卸大手の国分グループに属していました。
国分グループの公式沿革によると、1978年の項目に
「酒販店を組織化したボランタリーチェーン本部の国分グローサーズチェーン(株)(KGC)設立」
と記されています。
一方、KGC自身が2016年に公表した会社概要では、会社の設立日は1994年7月1日です。
この2つは矛盾しているように見えますよね。
経済産業省の資料によると、国分グループ本社の事業部として創業→1994年に分社化したから、のようです。
よって、この記事では、事業の起点を1978年、
現在の法人形態への分社化を1994年として扱います。
コミュニティ・ストアは、
国分グローサーズチェーンが本部となるボランタリーチェーンとして展開されました。
KGCの資料を見ると、一般的なコンビニ店舗だけでなく、
売店への商品供給や店舗機能の提供なども行っています。
つまり、KGCは「コミュニティ・ストアという看板の店を運営する会社」だけではなかった、ということです。
売店や小規模店舗に対して、以下のような役割も持っていました。
- 商品を卸す
- レジや店舗システムを提供する
- 店舗運営を支援する
なので、資料に出てくる「加盟店数」や「店舗数」が、
すべて街中で見かける「コミュニティ・ストア」の店舗数とは限らないんですよね。
そのうえで過去の店舗数を注意しながら見ていくと。
2015年12月末のKGC資料では加盟店数は86店。
経済産業省資料では2018年12月末のコミュニティ・ストアは60店舗となっています。
一方、撤退前の報道では商品供給先などを含む、
より広い意味での「加盟店数」が使われることもありました。
ネット上では「最盛期970店舗」といった数字も見られますが、
今回の調査では、それをコミュニティ・ストア単独ブランドの歴代最多店舗数として裏付ける一次資料は確認できていません。
数字だけを並べると規模感を誤りやすい部分なので、本記事では970店舗を確定情報として扱いません。
撤退の前年まで、店舗改革は続いていた
2021年に撤退するのですが、その前の年の2020年の資料を見ると、
KGCはまだ店舗運営の効率化や新しい仕組みの導入を進めていたことがわかります。
経済産業省に提出された「KGC行動計画」には、
セルフレジ、キャッシュレス決済、採用支援、食品ロス対策などが並んでいます。
無人・省人化店舗システム「SmaPit」もその一つで、
2020年時点で8店舗を出店し、2020~2021年に拡大する計画がありました。
少なくとも、2020年の時点ではまだまだ頑張るつもりだったんだね
ところが、そこから約1年後の2021年5月14日、KGCはすべての事業から撤退すると発表します。
公式に示された終了理由
2021年5月14日、KGCは全事業からの撤退を発表しました。
公式声明や当時の報道から確認できる事の経緯は、以下の4点に集約されます。
- 新型コロナの感染拡大「など」により、経営環境が急速に悪化
- 業績低迷からの脱却が極めて厳しい状況に
- 今後の回復も困難と判断
- 全事業からの撤退を決定
ポイントとなるのは、理由が「新型コロナの感染拡大など」とされている点です。
この『など』に何が含まれていたのか。
公式には具体的な内訳までは示されていません。
大手コンビニとの競争激化、人手不足、取引先との契約終了といった事情は二次資料から確認できますが、
KGC自身はこれらを直接の撤退理由としては明言していません。
コロナ以外の要因がどれほど影響したのか、具体的な内訳は伏せられています。
2021年11月末、チェーンとしての営業を終了
KGCとしてのすべての営業活動は、2021年11月末をもって終了しました。
当時の公的資料や取引先の発表を追うと、次のような動きが確認できます。
【KGCと外部機関の動き】
- KGC:2021年11月末をもって、すべての営業活動を終了すると発表。
- 山形ガス:KGCの事業撤退に伴い、11月30日をもってKGCとのコンビニ収納サービス契約を終了。
※取扱コンビニ名としてコミュニティ・ストアが記載されています。 - 国税庁:12月10日付の告示で、納付受託者からKGCを削除。
【店舗ごとのサービス終了】
- 湯河原町:コミュニティ・ストアでの税金・保険料などの収納代行業務について、
11月30日までに順次終了すると案内。
「終了期日は各店舗により異なります」としています。 - 湯河原むろさだ店:同じ資料では、収納代行業務の取扱期限が10月25日までとされています。
このように、KGCは11月末で営業活動を終えていますが、
店舗で提供されていた一部サービスについては、先立って終了していました。
金銭絡みなので、事務処理の齟齬がでないようにするためでしょうね。
倒産や買収ではなく「事業撤退と会社清算」
コミュニティ・ストアが終わった理由のは「倒産」によるものではありません。
また、別の大手コンビニ会社にブランドごと買収されたという事実は確認できませんでした。
公式な記録をたどると、運営元のKGCが「全事業から撤退」し、
その後に「会社を清算する」という正規の手続きを踏んで終了したことがわかります。
- 事業撤退の記録:
国分グループの公式資料には、2021年度の出来事として
「国分グローサーズチェーン(株)がすべての事業から撤退(11月)」と明記されています。 - 国分グループ会社清算の記録:
撤退当初の発表では、2022年4月末に会社清算を終える予定とされていました。
一方、Gビズインフォでは、登記記録の閉鎖等年月日は2022年7月15日、
事由は「清算の結了等」と記録されています。
「2022年4月末」は当初の予定で、実際に登記記録が閉鎖された日は7月15日です。
KGC撤退後、加盟店や提携先はどうなった?
KGCの事業は、街中の「コミュニティ・ストア」だけではありません。
コミュニティ・ストアの加盟店に加えて、
KGCから商品供給や店舗運営の仕組みを受けていた事業者もありました。
代表的なのが、京王ストアとスリーエフの「gooz」です。
- 京王ストア:KGCと提携し、「京王ストアエクスプレス with コミュニティ・ストア」を展開
- gooz:スリーエフが運営する別ブランド。
ただし、KGCと契約し、コミュニティ・ストアの商品供給の仕組みを利用
KGCの撤退後、この2つもそれぞれ別の対応を取ることになります。
京王ストア系店舗はセブン‐イレブンへ転換
京王ストアは2011年からKGCと提携し、
生鮮コンビニ業態「京王ストアエクスプレス with コミュニティ・ストア」を展開し、
商品の仕入れや収納代行サービスについてKGCの支援を受けていました。
その後、京王ストアとセブン‐イレブン・ジャパンは2021年4月、
駅売店・コンビニエンスストアのフランチャイズ化に関する業務提携契約を締結しました。
同年8月の公式発表では、京王ストアが運営する駅売店・コンビニについて、
約2年間で約40店舗をセブン‐イレブンへ転換するとしています。
ただし、この契約はKGCが全事業撤退を発表した2021年5月より前の出来事です。
「KGCの撤退を受けて京王の店舗がセブン‐イレブンになった」と言い切ることはできません。
goozはポプラの商品供給体制へ移行
goozは、スリーエフが運営するコンビニブランドです。
コミュニティ・ストアの店舗ではありませんが、2017年12月からKGCと契約し、
「コミュニティ・ストアの仕組みを利用した商品供給体制」を使っていました。
その後、KGCがコンビニ事業から撤退したことを受け、スリーエフはポプラと新たに契約。
2021年10月から、ポプラの店舗システムを利用した商品供給体制へ切り替えています。
KGCの撤退が影響したのは、
コミュニティ・ストアの看板を掲げる店舗だけではなかったことが分かります。
旧コミュニティ・ストア店舗は転換や独立営業も
一方、実際に「コミュニティ・ストア」として営業していた店舗のその後は一様ではありません。
ローソンへ転換した例や、
「コミュニティ・ストア」の看板を外して独立営業を続けた例もあることが、二次情報で確認できました。
※全国の旧店舗について、その後を網羅した公式一覧は確認できず。
現在のコミュニティ・ストア
運営会社だった国分グローサーズチェーン株式会社は、すでに法人として閉鎖されています。
Gビズインフォにて、2022年7月15日に「清算の結了等」を理由として、
登記記録が閉鎖されたことを確認できます。
FAQで要点整理
- コミュニティ・ストアはなぜ閉店したの?
-
国分グローサーズチェーンが2021年に全事業から撤退したため。
公式には、新型コロナウイルスの感染拡大などで経営環境が急速に悪化し、
今後の業績回復が困難と判断したと説明されています。 - コロナが原因だったの?
-
コロナ感染拡大は公式に挙げられています。
ただし表現は「新型コロナウイルスの感染拡大など」とされていて、
コロナだけが唯一の原因だったとは公表されていません。 - 全店が2021年11月30日に閉店したの?
-
いいえ。KGCの営業活動は2021年11月末で終了しましたが、個別店舗の終了日は異なります。
湯河原町の資料でも「終了期日は各店舗により異なります」と案内されています。 - 倒産したの?
-
今回確認した資料では、破産によって営業を停止した形ではありません。
全事業撤退を決めた後、会社を清算しています。 - セブン‐イレブンやローソンに買収されたの?
-
チェーン全体が一括買収された事実は確認できません。
一部店舗が別チェーンへ転換した事例はあります。 - 運営会社は今も残っているの?
-
残っていません。
国分グローサーズチェーン株式会社は、2022年7月15日に「清算の結了等」で
登記記録が閉鎖されています。 - コミュニティ・ストアの跡地は何になったの?
-
店舗ごとに異なります。他のコンビニへの転換、独立営業、閉店など複数のケースが確認されています。全国の旧店舗を網羅した公式一覧は確認できません。
- 最盛期は何店舗あったの?
-
コミュニティ・ストア単独ブランドの歴代最多店舗数を確定できる一次資料は、
今回の調査では確認できませんでした。
また、資料によって「加盟店」「通常店舗」「商品供給先」など集計対象が異なります。 - 「最盛期970店舗」という情報は正しいの?
-
今回の調査では、コミュニティ・ストア単独ブランドの店舗数として970店を裏付ける一次資料は確認できませんでした。本記事では確定情報として扱っていません。
あとがき
コミュニティ・ストアについて調べ始めたとき、どこかで見たことがあるような気がしていました。
けれど、資料を追っていくうちに、少なくとも自分の記憶の中にはっきりと、
「コミュニティ・ストアだった」と言える店はありませんでした。
それでも、長く地域に根づいていたチェーンであることは、沿革や店舗の記録から伝わってきます。
自分にとっては馴染みのない存在でも、誰かにとっては日常の風景だったのだと改めて実感します。
出典・参考資料
一次資料
- 国分グループ本社「国分のあゆみ」
- 国分グループ本社「2021年度の経営結果と2022年度の経営方針」
- Gビズインフォ「国分グローサーズチェーン株式会社」
- 地方公共団体情報システム機構(J-LIS)「国分グローサーズチェーン コンビニ交付サービスの取組み」
- 経済産業省「新たなコンビニのあり方検討会 本部ヒアリング 国分グローサーズチェーン株式会社」
- 経済産業省「KGC行動計画」
- 山形ガス「コンビニ収納サービス 提携先変更のお知らせ」(2021年10月21日)
- 国税庁「国税庁告示第33号」(2021年12月10日)
- 湯河原町「広報ゆがわら 2021年11月号」
- 京王ストア・セブン‐イレブン・ジャパン「提携1号店 8月25日調布駅中央改札口にオープン」(2021年8月18日)
- スリーエフ「2022年2月期 決算短信」
二次資料
補足:2021年5月14日の国分グローサーズチェーンによる撤退発表そのものは、今回の調査では旧公式サイト上の原文を直接確認できなかったため、終了理由の記載については当時の発表内容を報じた流通ニュースを二次資料として使用しています。
