am/pmを最後に見たのはいつだったでしょうか。
オレンジと紫の看板。首都圏、とくに都心部ではよく見かけたコンビニでした。
「とれたてキッチン」などの商品があり、電子マネー「Edy」も早い時期から全店に導入していたんですよ。
そのam/pmはいま、残念ながら日本にはありません。
2011年12月10日。
この日に、日本国内の全店舗が営業を終えました。
am/pmは会社が倒産して、ある日突然すべての店が閉まったわけではありません。
2009年にファミリーマートの傘下に入り、翌2010年には会社そのものが吸収合併されました。
その後、各地のam/pmが少しずつファミリーマートへ転換されていきます。
また、買収前には赤字や債務超過もありました。
では、それが「am/pmが消えた理由」だったのでしょうか。
確かに、経営状態が悪化していたことまでは公式資料で確認できます。
ですが、「経営不振だったからam/pmブランドをなくした」と説明した公式発表は確認できませんでした。
ファミリーマートによる買収、吸収合併、そしてブランド統合。
これが、日本のam/pmが姿を消した直接の経緯です。
【結論】
- 日本国内のam/pmは2011年12月10日に全店舗の営業を終了
- 2009年にファミリーマートの完全子会社となり、2010年に吸収合併
- 統合対象1,107店舗のうち733店舗がファミリーマートへ転換
- 買収前には営業赤字・最終赤字・債務超過が確認されている
- ただし、経営不振をブランド終了の直接原因とする公式説明は確認できない
- am/pmブランド自体は消滅しておらず、米国では現在も営業している
am/pmが消えるまでの年表
まずは、日本での始まりからブランド終了までを時系列で。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 1989年6月22日 | 共同石油が横浜市に日本1号店「日吉店」を開店 |
| 1990年4月2日 | 株式会社エーエム・ピーエム・ジャパン設立 |
| 2001年3月期 | チェーン総売上高2,000億円 |
| 2001年9月末 | 店舗数1,304店 |
| 2007年12月期 | 営業赤字・最終赤字。純資産もマイナス |
| 2009年2月 | ローソンが買収で基本合意 |
| 2009年5月 | ローソンが買収を見送り |
| 2009年12月28日 | ファミリーマートがam/pmジャパンを子会社化 |
| 2010年3月1日 | ファミリーマートがam/pmジャパンを吸収合併 |
| 2010年以降 | am/pm店舗を順次ファミリーマートへ転換 |
| 2011年12月10日 | 日本国内の全am/pm店舗が営業終了 |
| 2011年12月 | ブランド統合を完了 |
こうして見ると、am/pmは数年かけて進められた再編によって消えたのだとわかります。
日本のam/pmは1989年に始まった
日本でのam/pmは、1989年6月22日に始まりました。
新日鉱グループの社史によると、共同石油が神奈川県横浜市に日本1号店「日吉店」を開店しています。
※共同石油:現在のENEOSにつながる企業
翌年である1990年4月2日、株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンが設立。
その後、am/pmは店舗数を伸ばしていきます。
東京電力が2001年に公表した資料によると、2001年3月期のチェーン総売上高は2,000億円。
2001年9月末には1,304店舗を展開していました。
首都圏への集中度は高く、ファミリーマートの2010年アニュアルレポートによると、
2010年2月末時点の国内1,104店舗のうち、563店舗が東京都内にありました。
※アニュアルレポート:企業が1年間の事業内容や業績、経営方針などをまとめた年次報告書。
この、都心部における店舗網は、後にファミリーマートがam/pmを評価した理由でもあるようです。
赤字と債務超過
am/pmの財務状況が厳しくなっていたことは、公式資料に数字として残っています。
ローソンが2009年にam/pmの買収を検討した際、
エーエム・ピーエム・ジャパンの2007年12月期の業績が開示されています。
- 売上高:382億21百万円
- 営業損失:34億90百万円
- 経常損失:39億68百万円
- 当期純損失:148億83百万円
- 純資産:マイナス122億62百万円(債務超過)
同じ資料には、運転資本の確保や財務体質の改善、資本増強を目的として、
55億円の第三者割当増資を予定していたことも記されています。
※運転資本:仕入れ代や人件費など、日々の事業を回すために必要な資金。
※第三者割当増資:特定の相手に新株を発行して、会社が資金を調達する方法。
少なくともこの時点で、
財務面の立て直しが課題になっていたことは確認できるね。
ローソンが最初に買収に動くものの……
2009年2月25日。
ローソンはエーエム・ピーエム・ジャパンの全株式と全貸付債権を取得することで基本合意したと発表しました。
※全貸付債権:貸したお金を返してもらう権利をまとめて指す言葉。
この取引が成立すると、am/pmジャパンの親会社はレックスHDからローソンへ変わり、
レックスHDへの借入金も、返済先がローソンへ変わる予定でした。
※補足
ローソンがレックスHD(当時のam/pmジャパンの親会社)からam/pmジャパンの株式をすべて買い取る。
同時に、レックスHDがam/pmジャパンに貸していたお金を返してもらう権利もローソンが引き継ぐ。
これによってam/pmジャパンの借金の返済先がレックスHDからローソンへ変わる形になる。
レックスHDは、ローソンへの売却代金によって、貸していた分がなくなるということ。
ところが、その買収は成立しませんでした。
同年5月19日、ローソンはam/pmジャパンの取得を見送ることを決めました。
公式発表によれば、「商標権者との合意は困難であると判断したため」とのこと。
※商標権者:ブランド名やロゴなどの商標を使う権利を持つ人や会社。
ローソンの公式発表では相手方を『米国の商標権者』としており、社名までは明記していない。
当時の業界報道では、BPグループのARCO(Atlantic Richfield Company)が商標権者とされている。
具体的にどの条件で折り合わなかったのかまでは公表されていません。
この点は、後年の解説記事などでさまざまな説明がされていますが、
公式に確認できるのは、あくまでも「商標権者との合意が困難だった」ことのみです。
ファミリーマートがam/pmを買収
ローソンによる買収が見送られてから、およそ7か月後の2009年12月28日。
ファミリーマートがエーエム・ピーエム・ジャパンの全株式と全貸付債権を取得しました。
実質的な取得価格は120億円です。
そして、翌年の2010年3月1日に、ファミリーマートとエーエム・ピーエム・ジャパンが合併。
こうして、am/pmは独立したコンビニチェーンではなく、
ファミリーマートの中へ組み込まれていくことになります。
ファミリーマートはam/pmの何を評価したか
ファミリーマートの公式資料を読むと、買収の狙いは比較的はっきりしています。
それは、am/pmが持っていた首都圏、とくに都心部の店舗網。
ファミリーマートは2010年3月の合併発表にて、
「首都圏、特に都心部のドミナントに強み」を持っていると評価しています。
実は当時、全国のコンビニ店舗数はすでに4万店を超えていました。
ファミリーマートの2010年アニュアルレポートでも、
有力な出店余地が減少しているという認識が示されています。
ところが、そこに、東京都内だけで563店舗を持つam/pmが加わったら?
確かにすごく魅力的だ!
ファミリーマートは統合によって、都内でのシェア向上を進めようとしていました。
それだけではなく、仕入れや調達でのスケールメリット、物流インフラの効率化、
本社機能の統合によるコスト削減も同時に進めようとしていました。
そう、店舗の看板だけを付け替えるだけはなかったのです。
店舗網、物流、調達、本社機能まで含めた統合戦略でした。
すべてのam/pmがファミリーマートになったわけではない
2012年のファミリーマートのアニュアルレポートによると、
ブランド統合の対象となったam/pmは1,107店舗。
このうち、ファミリーマートへ転換されたのは733店舗でした。約66%ですね。
内訳は、
- 首都圏:524店舗
- 関西圏:107店舗
- 九州圏:102店舗
となっています。
残る374店舗については閉店となったとのことです。
なお、一部の加盟者は別の店舗へ移って営業を継続したりしていたようです。
ファミリーマート転換後、日商は平均約25%増えた
ブランド転換後の数字も公表されています。
ファミリーマートの2012年アニュアルレポートによると、
日商は転換前と比べて約25%増加したとのこと。
2011年度の統合効果については、営業利益ベースで約20億円と報告されています。
この戦略は成功したって判断してもよさそうな感じだね
※日商:1店舗あたりの1日平均売上高のこと。
am/pmの商品やノウハウは、その後どうなったのか
店舗ブランドは消えましたが、am/pmが持っていたものがすべてなくなったわけではありません。
ファミリーマートは2010年、
am/pmの都心部向け商品開発ノウハウをスープやサラダの商品開発に活用したと発表しています。
また、2012年には、am/pmのノウハウを取り入れた冷凍中食「フレッシュフローズン」も展開しました。
am/pmという店舗ブランドは確かに消えたけれど、
ノウハウは引き継がれているんだね。
2011年12月10日、日本のam/pmは営業を終える
ブランド転換は2010年から段階的に進みました。
そして2011年12月10日、日本国内に残っていたすべてのam/pm店舗が営業を終了します。
そして同月中には、ブランド統合も完了しました。
1989年の日本1号店から約22年後のことでした。
実は、am/pmというブランド自体は残っている
日本から看板は消えましたが、am/pmというブランドそのものは現在も残っています。
そう、アメリカに。
アメリカの公式サイトを見ると、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州、
アリゾナ州、ネバダ州、ニューヨーク州、ジョージア州などなど、出てきます。
「am/pmがなくなった」というのは、実は日本国内についての話なんですよね。
日本でam/pmが復活する可能性は?
am/pmという店舗ブランドの復活はないかもしれないね。
2021年、ファミリーマートは「懐かしの看板商品復活祭」を実施し、
かつてam/pmで販売されていた商品を期間限定で復活販売しました。
このように、am/pmの商品が再び店頭に並んだ例はありますが、
店舗(看板)自体の復活は…ないかもしれませんね。
FAQで要点を整理
ここまでの内容を、FAQ形式で整理していきます。
- am/pmは倒産したの?
-
倒産によって全店舗が一斉閉店したわけではありません。
2009年にファミリーマートの子会社となり、2010年に吸収合併。その後、ブランド統合が進められました。
買収前に営業赤字や債務超過だったことは確認されています。
- am/pmはいつなくなった?
-
日本国内の全am/pm店舗が営業を終了したのは、2011年12月10日です。
- am/pmは全部ファミリーマートになった?
-
全部ではありません。
統合対象1,107店舗のうち、733店舗がファミリーマートへ転換されました。
残りは閉鎖、またはファミリーマートへ転換しなかった店舗です。
- ローソンがam/pmを買収する予定だった?
-
はい。
2009年2月にローソンが買収で基本合意しましたが、同年5月に取得を見送っています。
公式理由は「商標権者との合意は困難」でした。
- am/pmは経営不振だったからなくなった?
-
買収前に赤字・債務超過だったことは事実です。
ただし、「経営不振が原因でam/pmブランドを終了した」とする公式説明は確認できません。
ブランドがなくなった直接の経緯は、ファミリーマートによる買収・吸収合併とブランド統合です。
- am/pmは海外にもまだある?
-
あります。
米国では現在もam/pmブランドが営業しています。
- 日本でam/pmが復活する予定はある?
-
2026年9月24日時点で、店舗ブランドを再展開するとする公式発表は確認できません。
2021年には、過去商品の期間限定復活企画が行われています。
あとがき
am/pmは、自分が学生の頃お世話になっていたコンビニのひとつなのです。
もちろん、特別な存在とかではなく、街に普通にあるコンビニのひとつ。
それがいつの間にか消えてしまっていた、そんな感覚です。
この記事を書きながら、久々に当時のことを思い出し、
ちょっとした寂しさと懐かしさにも襲われていました。
出典・参考資料
- ファミリーマート「日本国内におけるam/pm店舗 営業終了のお知らせ」(2011年12月12日)
- ファミリーマート「株式会社ファミリーマートと株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンの合併にあたって」(2010年3月1日)
- ファミリーマート「株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンの株式の取得(子会社化)の完了、ならびに未定事項決定のお知らせ」(2009年12月28日)
- ファミリーマート「Annual Report 2010」
- ファミリーマート「Annual Report 2012」
- ローソン「株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンの子会社化に関する基本合意書締結に関するお知らせ」(2009年2月25日)
- ローソン「株式会社エーエム・ピーエム・ジャパンの子会社化の見送り及び業務提携の解消に関するお知らせ」(2009年5月19日)
- 東京電力「am/pmと東京電力による新業態の共同開発について」(2001年10月17日)
- 新日鉱グループ社史・渋沢社史データベース
- am/pm 米国公式サイト
