なぜ人は、相場で同じ失敗を何度も繰り返してしまうのか

「次こそは絶対にルールを守る」と心に誓ったはずなのに、
気づけばまた同じ場面で損切りを先延ばしにし、無謀なナンピンを繰り返してしまう。

こうした経験は、多くの人が、いえ、ほとんどの人が通る道と言えるかもしれません。

ですが、安心してください。

トレードで失敗を繰り返す理由は、意志が弱いからでも、才能がないからでもありません。

多くの場合、人間の脳にあらかじめ組み込まれている「認知バイアス(考え方のクセ)」
そして反省を次の行動にうまく結びつけられない「学習の歪み(失敗から学びにくい状態)」が関係しています。

この記事では、なぜ同じミスが習慣化してしまうのか、その心理的な背景を整理します。

あわせて、負のループから距離を取るために重要な「メタ認知(自分の思考や感情を一段上から眺める力)」という視点についても触れていきます。

目次

トレードで失敗を繰り返す理由:なぜ「反省」は裏切るのか

あなたも今までの人生において、「次はやらない」と反省したことがあるはずです。
それでも同じ過ちを繰り返してしまったことがあるでしょう。

でも気に病むことはありません。

実は、脳は合理性よりも「痛みを避けること」を優先するように設計されているのです。

このことからも、相場で起きている問題を理解するには、
気合いや根性論ではなく、人間の心理そのものに目を向ける必要があります。

脳に組み込まれた「認知バイアス」の正体

私たちは、物事を常に客観的に判断していると考えがちです。
しかし実際には「認知バイアス(考え方のクセ)」という思考の偏りに影響されます。

特に相場のように不確実性が高い環境では、思考の偏りが表に出やすくなります。
その結果、合理的な判断が難しくなってしまいます。

損失を認められない「プロスペクト理論」

トレードで特に厄介なのが、プロスペクト理論で説明される「損失回避性」です。

人は、利益を得る喜びよりも、損失を被る痛みを強く感じます(目安として2倍近くと言われます)。

(だから、いい思い出より、辛い思い出の方が記憶に残りやすいのも仕方のないことかもしれませんね)

そのため、含み損が発生した直後は
「いま損切りするより、少し待てば戻るかもしれない」
という心理が働きやすくなります。

ここで判断はすでに合理性よりも感情に寄ってしまっています。

結果として、同じような局面で損切りができず、失敗を繰り返すことになります。

損切りが遅れる流れとは?
評価損が出てショックを受けるが、「まだ大丈夫」「もう少し待てば戻るかも」と損切りをためらってしまう。ずるずる先送り。結果、損失が拡大してしまう。
つまり、合理的な判断ができず、失敗を繰り返してしまうのだ。

都合の良い情報だけを集める「確証バイアス」

自分のポジションが不利な状況にあるとき、
人は無意識に「自分の判断が正しい」と証明してくれる情報ばかりを探します。

反対に、自分の予測を否定するようなチャートの形やニュースは無視したり、
重要度を下げて解釈したりしがちです。

たとえば、下抜けのサインが出ているのに「一時的なヒゲ」と決めつけて、
都合のいい材料だけを拾ってしまう、というように。

この確証バイアスが働くと、ルールを破る理由を後付けで正当化しやすくなってしまうのです。

「自己正当化」が学習を阻害する

失敗を繰り返すもう一つの理由は、人間が持つ「自己正当化」にあります。

ミスをしたときに「運が悪かった」「相場が異常だった」と外部に原因を求めることで、
自尊心を守ろうとする反応です。
これも自己防衛の一環ですね。

ですが、この自己正当化が働いている限り、
自分の行動のどこに問題があったのかという「真の原因」に向き合いにくくなります。

本当の意味での反省が行われないため、
脳はそれを「改善すべき課題」として認識せず、
同じ過ちを再現しやすくなります。

同じミスを習慣化させてしまう「学習の欠陥」

トレードの技術を磨いているつもりでも、
実は「間違った習慣」を脳に学習させてしまっているケースがあります。

なぜ、反省しても治らないのか。

そこには学習プロセスの歪みがあります。

ルールを破る行為が「快感」に変わるリスク

皮肉なことに、ルールを破って一時的に助かった経験が、最も恐ろしい「誤った学習」を生みます。

本来なら損切りすべき場面で耐え、運良く価格が戻って助かることがあります。
そうすると、助かった直後には、脳内で快楽物質のドーパミンが放出されるのです。

だから、この成功体験が、
「ルールを守る大切さ」よりも「ルールを破れば助かる」
という形で記憶されやすくなってしまうのです。

たとえば「損切りラインを決めていたのに切れず、たまたま反発して助かった」という一回が、
次のルール違反を呼びやすくなります。

こうしてルールを破ることが無意識のうちに習慣化され、
相場が本当に逆行したときに大きな失敗につながっていきます。

メタ認知の欠如:客観的に自分を見られない罠

トレード中に自分がどのような感情に支配されているかを把握できない状態、
つまり「メタ認知(自分の思考や感情を一段上から眺める力)」の欠如も深刻です。

相場で熱くなっているとき、
メタ認知が働いていないと、自分の感情を「相場の真実」だと勘違いしがちです。

「今買わないとチャンスを逃す」という焦りに飲み込まれ、
過去に何度も失敗したパターンに自ら飛び込んでしまいます。

たとえば「機会を逃す気がする」から根拠が薄いのに飛び乗り、
数分後に逆行して損切りを先延ばしにする、というように。

負のループを断ち切るための「正しい反省」と「仕組み化」とは

同じ失敗を繰り返さないためには、感情に頼った反省を卒業する必要があります。

精神力を鍛えるのではなく、ミスが起こりにくい「環境」と「思考プロセス」を用意することが現実的です。

重要なのは、感情が暴走しにくい構造を用意することです。

感情を切り離した「トレード記録」の徹底

反省を次に生かすには、主観を排除したトレード記録が役に立ちます。
エントリーの理由、その時の感情、決済の根拠を記録しておくと、自分の行動パターンが見えてきます。

定期的に記録を見返すことで、自分がどのバイアスに陥りやすいのかを特定しやすくなります。
これはメタ認知を鍛えるトレーニングにもなります。

「同じミス」を単なる失敗で終わらせず、改善のためのデータに変換する。
この作業が、学習の歪みを埋める助けになります。

「意思」を使わないルール遵守の仕組み

人間はストレスがかかると、合理的な判断が鈍ります。
したがって、その場の意思だけでルールを守ろうとするのは無理が出ます。

これを避けるには、逆指値(ストップロス)をエントリーと同時に入れる、
1日の許容損失額を超えたら取引を止めるなど、
意思を介入させない仕組みが有効です。

場合によっては「その日のうちにPCを閉じる」といった物理的な対策も現実的です。

小さくても「ルールを守れた」という達成感を積み重ねることで、
脳の報酬の回路は少しずつ書き換わっていきます。

まとめ

トレードで同じ失敗を繰り返す理由は、個人の能力不足だけで説明できません。多くの場合、人間が持つ「考え方のクセ」と「学習の歪み」が絡んでいます。

損失を避けたい本能や、自分を正当化したい心理が、同じ過ちへとあなたを誘ってしまうのです。

このループから抜け出すには、
まず「自分は影響を受けるのだ」という現実を受け止めることが第一歩です。
そのうえで、感情ではなく、記録と仕組みで対処していきます。

まずは、あなたがどんな場面で判断を誤りやすいのかを把握するところから始めてみてください。
そこで初めて、対策が具体になります。

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